アイヌ語入門2 

2−2 さまざまな口頭文芸
コラム ‐ 「ユーカラ」という言葉
 アイヌの口頭文芸の呼び名として、 「ユーカラ」という語が比較的よく知られているようです。
 この「ユーカラ」という言葉は、 英雄叙事詩を指す呼び名の一つである 「ユカ」から来ているものと思われます(※)。
 これまで紹介したページでも述べているように、 アイヌの口頭文芸には様々な種類があり、 それぞれにアイヌ語での呼び名も異なります。 同じ英雄叙事詩でも、地域によってはサコロベ、 ハウキなどと呼ばれるものがあります。
 したがって、アイヌの口頭文芸全体をさして「ユカ」と呼んだり、 あるいはそれをアイヌの口頭文芸の代表的なものとして紹介したりするのは適切な表現とは言えません。


(※)「ユカ」 を現在一般的に用いられているアイヌ語のローマ字表記法で書くとyukarとなります。 最後のrは、後ろに母音が付かない音です。現在のカタカナ表記では、 このような場合、 小文字で「」と書いてra「ラ」とは区別します。 また、この言葉のアクセントは「ユ」のところにあるため、 この音がやや長く「ユー」と聞とえることがあります。