アイヌ語入門2 

2−2 さまざまな口頭文芸 < 神 謡 >
神謡とは
 短いメロディーを繰り返しながら物語の言葉をのせるようにして語られます。
 それぞれの物語ごとに、 おおよそ決まったメロディーがあります。 また、語るときには、 決まった言葉が繰り返し挿入(そうにゅう)されることが特徴です。 その言葉はそれぞれの物語によってだいたい決まっています。 『火の神』の例では、 「アテヤテヤテンナ  テンナ」という言葉がそれにあたります。 このほか、 アオバトのカムイ(※)の物語で「ワオリ」、 シマフクロウのカムイの物語で「フ  フ カト」などの例が見られます。 ただし、伝えられてきた地域や語る人が違えば、 内容が同じような物語でも挿入される言葉が同じとは限りません。 また、 これらの言葉は神謡の主人公であるカムイの鳴き声などからきているものが多いという説もありますが、 言葉の意味がよくわからない場合もあります。
 一つの物語は数分で終わるものもあれば、 一時間以上かかる長いものもあります。 物語の内容は、動物や植物のカムイ、 雷やあるいは病気のカムイなどさまざまなカムイが、 カムイの世界や人間の世界で体験した身の上を語るものが多く見られます。 また、このような物語を通じて、 動植物や自然界の出来事などに対する人間の心構えなどが語られるものもあります。