アイヌ語入門2 

2−2 さまざまな口頭文芸 <英雄叙事詩>
コラム − 口頭文芸によく見られる表現
 例えばこの前のページで紹介した英雄叙事詩では、 この後の場面で、 戦いが長く続く様子を「二年がかり/三年がかりで/戦って……」 と対句のような表現を使って語られています。 『神謡』にて語られています、 「着物の/(縫い目の)二つの聞に上手で、 縫い目がたいへん美しいことを述べるときによく見られる表/ 二つの光が/きらきらと光り/ 三つの光が/きらきらと光りました」とあるのは、 縫い物が現です。 このような、 ある様子を述べる際に似たような表現を用いることは、 アイヌの口頭文芸の特徴の一つです。
 また、「窓の縁の上」を言うのに「窓の縁/縁の上で」 と繰り返しのような表現を使うことや、 ものの呼び名などに日常の会話などで用いるものとは違った言葉を使う例もあり、 後者は、特に英雄叙事詩に多く見られます。
 こうした表現は、 語るメロディーにのせやすい言葉になっていることも多く、 それらをたくさん覚えて、 場面に合わせて使いこなせるようになることで、 物語をより巧みに語れるようになるのだとされています。