アイヌ語入門2 

2−1 アイヌ口頭文芸のあらまし
歴史と現状
 明治時代以降、日本語による教育をはじめとする同化政策のもとで、 アイヌ語は日常生活では次第に使われなくなり、 アイヌ語の口頭文芸が語られる機会や、 語ることのできる人、聞いてわかる人も少なくなっていきました。
 儀式のときや大人たちの集まりの場などでは、 集まった人々がごく自然に様々な口頭文芸を語りあい楽しんでいましたが、 子どもたちには敢えてアイヌ語を教えようとしない人が多かったといいます。 また、これはアイヌに限ったことではありませんが、 ラジオ、テレビなどの娯楽が登場することで、 親や年寄りから物語を聞く機会が減っていったとも言われています。
 このような時代の中でも、自分の知っている物語を自ら記録したり、 周囲のお年寄りたちから物語を聞いて書きとめた人たちがいました。 こうした採録に協力を惜しまなかったお年寄りもいましたし、 ふだんの暮らしの中で様々な物語を 語りあうことが途絶えたわけでもありませんでした。



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 近年、アイヌ語の復興や継承が唱えられるようになり、 口頭文芸をめぐる環境も大きく変わりました。 各地でアイヌ語やアイヌ文化を学ぶ教室などが開催されるようになり、 それらの場で教材や学習の手引きとして物語が用いられています。 口頭文芸の公演なども行なわれるようになりました。 アイヌ語の辞書や入門書なども刊行されるようになり、 物語を録音した学習用の教材や、 長年にわたって採録した物語をまとめたシリーズなども刊行されています。

アイヌ文化教室で物語を語る上田卜シさん





アイヌ民族博物館主催の「アイヌ文化教室」で
物語を語る上田卜シさん




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