アイヌ語入門2 

2−2 さまざまな口頭文芸 <散文説話>
コラム − 物語の"語り役"
 『火の神』の話の終わりは「〜と火の神様が語りました」となっています。 つまりこの物語は、 主人公である火の神が自分で「私は」 と物語るかたちになっています。 このように、アイヌの物語では、 いっぱんに主人公がその物語を自分で述べるものが多く、 日本の昔話によく見られるように、 主人公たちの動きが「むかしむかし、 おじいさんとおばあさんが、いました。 おじいさんは山ヘ出かけました……」 と語られるものはあまり見られません。
 『六重の喪服を着た男』の散文説話は、 物語の最初は娘が主人公ですが、 途中で主人公はその息子へと交代します。 このような場合は物語の中で「私は」と語る役も息子に交代していきます。

知里真志保『アイヌ民譚集』

知里真志保『アイヌ民譚(みんたん)集』
散文説話の中に、 「ペナンペ」と「パナンペ」を
主人公とした、隣に住んでいる者が成功して
裕福になったのを真似して失敗してしまうと
いう内容の物語があります。
この本はこの種類の散文説話を中心に集め
たもので、ローマ字表記のアイヌ語原文と
日本語訳を載せています。