アイヌ語入門2 

2−2 さまざまな口頭文芸 <英雄叙事詩>
英雄叙事詩とは
 短いメロディーを繰り返しながら物語の言葉をのせるようにして語られます。
 語るときのメロディーは、 語り手がそれぞれに独自のものを持っているとされており、 他の人から聞いて覚えた物語でもその人が演じるときには 自分のメロディーで語ると言われています。 また、物語の途中で節回(ふしまわ)しが変えられる場合もあります。
 語り手や聞き手は、木の棒などを持って、 座っている近くを叩きながら拍子(ひょうし)をとります。 聞き手や、ときには語り手自身も、 物語の展開に応じて短い掛け声をかけたりします。
 いっぱんに長大な物語が多く、 語り終えるのに数十分から数時間あるいはそれ以上かかると言われています。
 物語の内容は、空を飛んだり海にもぐったり、 土の中を突き進んだりできるような、 超人的な力を持つ主人公の少年が、自分の生い立ちや、 冒険や恋愛や戦いなどの体験を自ら語る、 といったものがこれまではよく知られています。
 このような物語では、主人公たちの日常の暮らしぶりも描かれますが、 例えば主人公の戦いの場面では手に汗を握るような激しい描写が繰り返されるなど、 壮大で血湧(わ)き肉躍(おど)るようなストーリーのものが 多いことも特徴とされています。
 いっぽうで、 若いときにはいさかいもしたけれど 今は仲良く暮らすようになったという夫婦の物語など、 必ずしも上に述べたような枠にはあてはまらない内容の物語もあります。