アイヌ語入門3 

3−2 歌と踊りと楽器 <1 歌と踊り>
●動物のしぐさをおりこんだ踊り



 動物のしぐさを真似た動きをおりこんだ踊りです。 地域によって伝承されている曲は様々です。 ツル、シギ、アマツバメ、スズメ、ネズミ、キツネ、 バッタなどの踊りがあります。 歌詞にも、 それらの動物の名称や鳴き声をあらわす言葉が使われたりしています。

 アイヌの伝統的な歌では、音の高い低いだけではなく、 声の出し方にともなう音色(ねいろ)を組み合わせたりすることも、 大事な要素となっているようです。
 歌の中では例えば、 ふつうに話すときとそれほど変わらない声、 唸(うな)るような声、細い裏声など、 いろいろな音色が聞かれます。 息を吐いたり吸ったりする音を使う場合もあります。 また、ふつうの声と裏声とをすばやく往復させたり、 喉の奥を使って声を小刻みに出すなど、 独特な響きを出す方法も聞かれます。 また、「rrr(ルルル)」と連続して舌先を震わせる音がありますが、 これを鳥のしぐさをおりこんだ踊りの中で鳥の鳴き声として用いたり、 他の踊りで掛け声に使ったり、 子守歌の中で赤ん坊をあやすための音として歌詞に組み込んだりします。
 こうしたいろいろな声の使い方は、 曲の中で音楽的な効果を生み出す要素のひとつにもなっているものです。 時代や地域、 一人ひとりの声の質やその人なりの工夫によって違ってくることもありますが、 例えば座って数人で歌う歌で「ポン」を裏声で歌うなどのように、 音色の使い分けなどが伝えられているものもあります。