アイヌ語入門3 

3−1 アイヌの芸能のあらまし
アイヌの芸能のあらまし ‐ その歴史と現状
 アイヌ民族が育んできた文化の一つに、 様々な歌や踊りなどの芸能があります。
 どの民族にも、 それぞれが育んできた歌や踊りなどがあり、 お祭りや儀式の中で演じられたり、 あるいは日々の暮らしの中で伝えられてきました。
 アイヌの昔話などにも、 様々な歌や踊りが、 儀式のときに行なわれたり、 日々の生活の中で楽しまれるようすを語っているものがあります。 日本の江戸時代や明治の初期に書かれた文献の中にも、 このような歌や踊りの記録が見られます。

 明治時代以降、アイヌの芸能をめぐる環境は大きく変化し、 昔のような踊り方や歌い方、 楽器の演奏などを受け継ぐ人はしだいに少なくなりました。 その背景として、他の民族や社会と同様に、 ラジオやテレピをはじめとする新たな娯楽が登場したり、 学校教育などを通じて西洋風の音業が広まったことなどが挙げられます。 また特にアイヌ民族の場合、いわゆる同化主義のもとで、 伝統的な歌や踊りを演じる機会が減少したことなども要因です。
 そのような時代の中でも、 儀式などで集まったときに歌や踊りを楽しむことは各地で見られましたし、 ふだんの暮らしの中で折りに触れて昔ながらの歌を口にした人も多かったといいます。 また、観光地などで披露(ひろう)することを通じて伝承されてきた歌や踊りもあります。

 現代では、他の多くの人々と同様に、 アイヌも一人ひとりが様々な歌や踊りに親しんでいます。 それとともに、 先祖から受け継がれてきたものを学び伝えることも行なわれています。

 近年、アイヌの伝統文化の復興・継承の気運の中で、 アイヌの芸能についても関心が高まり、 学習・伝承へ向けた動きもおこってきました。 道内のいくつかの地域では、 舞踊の保存会などが組織され、 それぞれの地域で伝承されてきた歌や踊りを学んだり、 新たに他の地域のものを採り入れたりする活動が行なわれてきました。

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 1984(昭和59)年には、「アイヌ古式舞踊」が国の重要無形民俗文化財の指定を受け、 道内8つの地域の保存会がその保持団体として認定されました。 1994(平成6)年には、さらに9つの保存会が追加認定されています。 こうした動きの中で、 各地で公演なども行なわれるようになり、 伝統的な歌や踊り、 楽器の演奏を録音・録画したものが出版され、 鑑賞や学習に利用されています。 現代的な音楽の要素を採り入れるなどした 創作活動も見られます。

 このページでは、これらの中から、 伝統的な歌や踊りと楽器について紹介します。
帯広カムイトゥウポポ保存会の公演

帯広カムイトゥウポポ保存会の公演
(1997年、春採アイヌ古式舞踊釧路リムセ保存会30周年記念公演)

 アイヌの伝脱や神話などの物語のほか、 祈りの言葉、あらたまった場での挨拶(あいさつ)の言葉などには、 語られるときにメロディーがついており、 歌のように感じられるものもあります。 これらのうち、物語については、 この 『アイヌ語入門』の「2」(口承文芸) でとりあげています。

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